所在地:神奈川県相模原市中央区高根1-2-17 創業:2023年
神奈川県相模原市をワクワクするようなワイン産地に変えていくかもしれない。そう私たちをワクワクさせてくれるのがケントクワイナリーです。 ケントクワイナリーの母体は、産業廃棄物の中間処理業者である大森産業であり、ワイン造りとは全く関係のない業種からのスタートでした。 体力的負担が大きい業務内容であるため、体力的に続けることが難しい高齢の社員でもできるよう、 農業法人「八咲農園」を設立し、野菜作りを始めたことがワイナリー誕生のきっかけです。 また、同社の現会長である森山謙徳さんが大のワイン好きであったこともあり、野菜造りからやがてブドウ栽培とワイン醸造へと夢が広がりました。 そこで、責任者に任命されたのが甥の森山錬一さん。もちろん産業廃棄物などの資格を所有するものの、ワイン醸造やブドウ栽培についてはもちろん未経験。 しかも錬一さんはもっぱらビール党ということもあり、最初のうちはワイン業界参入に対し、及び腰であったそうです。 最初は苗が枯れてもその理由さえ分からず・・・といった具合だったうで、 それに加えて相模原市は雨が多いうえに夜の気温も下がりにくく、ワイン用のブドウの栽培に向いた環境でもなかったのです。
そんな中、2015年より、自社畑に苗木の植樹を開始し、錬一さんご自身の経験値を積み重ねるべく適正品種を見極める取り組みをはじめました。 現在栽培するのは、カベルネ・ソーヴィニョンやメルローなどの欧州系品種や、マスカット・ベリーA、ブラック・クイーン、ヤマ・ソーヴィニョンといった日本の品種です。 自社醸造を始めるにあたり、現在の自社畑の収量では足りませんでしたが、森山さんは相模原にこだわり続けます。 そこで利用したのが市内で栽培された果実を原料とすることを条件にした「さがみはらめぐみワイン特区」。 この制度を神奈川県内で初めて利用し、果実酒蔵免許を取得しました。 この「ワイン特区」とは、構造改革特区制度における酒税法の特例措置によって、果実酒製造業に参入しやすくなる区域のことを指します。 栽培や醸造に対してほぼ経験が生きない業種でありながら、森山さんの要領の良さからかなりスムーズにワイン造りが行われています。
マイペースながら着実にコツコツとワインを生産し続ける森山さん。 十分な設備が整っているのでもっと生産量は増やせますが、本業との兼ね合いもあり、割ける時間も限られているので、あまり本数を増やすつもりはないそうで、 また、樽熟成をさせたり、長期熟成が可能なアイテムにチャレンジする予定も今のところはないそう。 相模原のワインだから、自分たちで育てたこのブドウの個性を生かして、日常の食卓でリピートしてもらえたらいい」と語ります。 地に足がついているという以上に、相模原のブドウ畑に足がついた発想です。 経験がないということはここではマイナスにはならず、むしろケントクワイナリーのヴィジョンは、日本ワイナリーの在り方を覆す可能性を持ちます。 ただ愚直に誠実に相模原の地を醸し出し、カジュアルに親しむ、土地に根差したピュアな精神が宿ったワインです。